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主題 C 「情報化社会と数理科学」
(三重大学一般教育通信No.13(2000.12.1), p.4.)


 IT(インフォーメーション・テクノロジー)産業育成を首相が国際公約して以来,急速に社会のファンダメンタルズとしての情報化が進みつつある(のだろうか?).ともあれ, 主題Cを設定したこと自体は,時代を先取りしていたということもできる.
 確かに,コンピュータの簡単な実習が優先される講義などもあり,それなりに学生諸君 の人気がないわけではない.しかし,テーマを設定した当初の,情報化社会を支える基盤 としての数理科学の全体的な理解の上に,情報化社会を(それぞれの立場で)担うべき人 材の育成という点では,当然に共通教育以降の専門教育の中で完成されていくべきもので あっても,それに至る道筋をつけるまでには共通教育の舞台では実現されていないきらい がある.もちろん,そこまでが共通教育の守備範囲でないという意見もあるのだろうし, 学生個々人の人生観や世界観の形成に資することこそ共通教育の目的であって,あまり専 門性が必要なことはすべきでないという意見もあるだろう.
 スタッフや授業時間数や設備の問題もあって,オートマティックな養成システムのよう なそれを期待されても,提供することは難しい.やはり,現状では,学生個々人が目的意 識をもって,講義や教官の選択をして貰う以外にはない.好奇心と熱意と誠実さがあれば, 学生諸君に「不可能」ということはほとんどない.むしろ,単位の取得の難易によるので なく,10年先の自分の人生を想像して欲しい.そして,それに必要な(と考える)講義を聞き,教官に接して欲しい.時代が変わっても変わらないが,時代とともに変われる共通教育でありたいと願っている.学生諸君の意見も大いに参考にさせていただきたいと思っている.


(註1)ここでの首相とは森総理のことである.
(註2)三重大学の共通教育には統合科目と基礎科目がある.統合科目には「主題」という括りがあって,その1つが主題 C 「情報化社会と数理科学」である.学生はある主題のもとに開講されている講義を一定単位受講し,その後,その主題下のテーマを自分で選び,それについての論文(レポート)を仕上げることによって,その主題の論文の単位が得られる.上の文章は,各主題の責任者が,それぞれの主題の内容を宣伝するためのものとして書かれた.


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