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『数学用語英和辞典 新訂版』まえがき



新訂版 まえがき凡例


 2013年に初版が発行されて以来,多くの読者から反響があった.特に,対応する和英があると便利だという声が多かった. また,発行から7年が経過して,数学を取り巻く環境も変わってきた.特に,統計学・データサイエンス・情報科学・人工知能・ファイナンス・数理物理学などの進展は目覚ましいものがある. それらに関わって,新聞やメディアなどでもAIという言葉を広く使うようになってきたが,そうなると言葉の誤用もあちらこちらで見かけるようになった.正しい言葉を確認できる簡便なものがあるといいが,バランスの取れたものがない.
 初版のまえがきでも述べたが,数学用語はちゃんとした定義を持っている.定義を曖昧にして使えば,背景となるべき数学の力に頼ることはできない. 多くの人が同じ言葉を使うようになると,しかも定義を確認しないまま使われるようになると,数学の用語ではなくなる. それでも多くの人が使うことになると,数学の用語としてではなく,言葉の意味がずれていく.言葉は生きているという所以である.
 そういう際,用語は定義を変えたり,似たような用語を生み出したりする. 特に,応用に関する分野での言葉の変化や増え方は著しい. 初版でも,そういう用語の変化がもたらす数学や数理科学の変容に対する一種のアンカーを与えたいという思いもあった. それぞれの用語にちゃんとした定義を与えることは,手に持てるサイズという出版社の企画から逸脱する.
 さらにまた,和英を追加するとなれば,大部なものにならざるを得ない. そこで,対応する和英辞典をではなく,和英索引の形にすることにした. さらには物理的な書籍として,特に爪を改良することによって,より使いやすくなるように計らった.ズレを持たせて視認性を高めたつもりであるが,どうであろうか.
 もちろん新訂版では,初版でのミスプリントや不統一など,つまり配列順序,スペル,書式などを全面的に見直した. 見出し語だけではなく,用例もかなり追加して,用語生成のストーリー性がより分かりやすくなったのではないだろうか. また,初版にもあったが,さらに多くの人名を追加し(1100名を超える),「人名小辞典」としても使っていただけるようにした. 用語に定義を付けないことに対応して業績やエピソードは割愛し,その代わりできる限り生没年月日と生没地を記載するようにした. 人名が見出し語になっている場合に,その用例に人名を冠した数学用語を挙げた.
 さらに利便性を上げたこの新訂版がより広い数学利用者層と学習者層に受け入れられることを願って前書きに代える.

2020年9月

編者   蟹江 幸博

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