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『シンメトリー』のホーム.
『シンメトリー』 ドイツ語版の著者まえがき
シンメトリー(対称性)については実にさまざまな視点から考えることができます.
狭く考えると,人間の身体は大なり小なりそうですが,両側対称性(線対称)ということになります.
広い見方をすれば,何かしらの規則的な繰り返しがあるようなものなら,すべてにシンメトリーがあるとも言えます.
そういう意味では,四季の移り変わりも周期的に繰り返され,シンメトリーがあります.
また4気筒エンジンにも,1/7 の小数展開にも,絨毯模様のパターンにも,アクセサリーにも,歌や詩にさえもシンメトリーがあるのです.
身の回りのあらゆるところにシンメトリーを見つけることができます.
科学や芸術では,ことにそうかもしれません.
現代の工業製品は形がほとんど同じ,つまりシンメトリーが生まれるように作られています.
この本の目的は,シンメトリーの例を選りすぐって,分かりやすく解説することです.
体系的に完全であろうとはしませんでした.
参考文献をあげておきましたので,それぞれ先に進んでいただければ嬉しいと思います.
一番重要なことは,私たちの世界の中にあるシンメトリーを見つけるための「眼を鍛える」ことだと思います.
シンメトリーは,また,問題解決のための方法論的な道具としても用いられることがあります.
シンメトリーをテーマにした本はたくさんありますが,特定の領域だけを取り上げたものが多いようです.
中でも,ヘルマン・ワイルの本[49]は古典的な名著です.
[19]では物理的また化学的な側面に重点がおかれています.
[42]では哲学的な思想と結びつけられています.
2次元や3次元の幾何学,工学におけるシンメトリーを解説したものが[38]です.
シンメトリーはまた,美術のさまざまな領域,とくに装飾美術において,中心的な役割を果たしています([2], [7], [14]を参照).
また,M.C.エッシャーの絵にも触れておくべきでしょう([13], [31]を参照).
最後に,シンメトリーは繰り返し展覧会や会議のテーマにもなっています([33], [48]を参照).
この本は,高校生,学生の皆さんやその先生,そして非専門家向けのものです.
各章は独立に書かれていて,どの章からでも読めるようになっています.
また.随所に問題が入れてあります.
基本的なものですが,一部はより進んだテーマに関連したものもあります.
問題の解答は各章の終わりにまとめておきました.
この本で紹介したアイデアの多くは,わたしの学生たちが教えてくれたもので,彼らに感謝しています.
いくつかの例に対しては,同僚のピーター・ガリンに感謝しなければなりません.
特に本文を読んで批評してくれた同僚のレト・シュプリに,また
この仕事を寛い心で管理してくれたB.G.Teubner(Leipzig)出版社のユルゲン・ヴァイス氏にも感謝します.
フラウエンフェルト, 11997年12月ハンス・ヴァルサー
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日本語版への原著者のノート
嬉しいことに,シンメトリーに関する私の本が日本語でも読めるようになりました.
興味を持っていただけば,読者の方にはものを見抜く力がつくでしょうし,きっと喜んでもいただけるでしょう.
蟹江先生が,この本を日本語にするために,もう一度してくださった入念なお仕事には,感謝の気持ちで一杯です.
またこの機会に,日本語版の出版のために尽力された八幡努さん(The English Agency, Japan Ltd.)と日本評論社さんにも有り難うと申し上げたいと思います.
フラウエンフェルト 2003年6月ハンス・ヴァルサー
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