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『数学者列伝:オイラーからフォン・ノイマンまで』
 の序文



 本書は,18世紀以降,いまから100年前ぐらいまでに生まれた数学者の中から,最も特筆すべき人物を何人か選び,その人たちの生涯について, 何かしらの話は読んでみたいけれど,あまり膨大なものはちょっと,という人たちのために書かれたものです. 10章からなり,それぞれの章に6人ずつ,全部で60人の伝記が収められています. 彼らは皆,そのアイディアを通して,教えることを通して,またそれとは別の仕方で,数学に重要な貢献をした人たちです. 主に力点を置いたのは彼らのさまざまな人生の物語の方で,数学的業績を詳しく述べることはしませんでした. 本書では伝記を誕生日の順に並べているので,読む進めていくと数学の発展していった道筋が,まるで人の成長のように感じられるでしょう. 数学史の本を読むと,数学の発展に関わった何百のという人の名前が並んでいますが,私の選んだ60人だけでも,起こったことのあらましを知るには十分だろうと思います.
 本書を書いているとき私が思い描いていた読者というのは,数学に興味はあるけれど,必ずしも数学の歴史には馴染んでいないという方々でした. そういう中には,教育は受けたけれど,自分を数学者だと言うのははばかられるという方も大勢おられると思います. 特に詳しく数学史を勉強したいわけではないとか,読んでいる時間がないという大学生の皆さんには特に,本書で概略をつかむことは役に立つだろうと思います. 数学の発展に寄与した人々のことを知れば,数学自体もずっと面白く感じられるでしょう. 数学的なことであれば,もっと詳しく書いてある本を捜すのは簡単なので,技術的な事柄を述べるのは最小限に抑えました.
 本書に書いてある通り,この時代の特筆すべき数学者たちは驚くほどさまざまな性格の人たちの集まりです. すべてでないにしても,本書に取り上げた数学者の名前は大抵,今日のほとんどすべての数学者にとって馴染みのあるものでしょう. それぞれの伝記には,その人物の肖像(写真)が紹介されています. そこで明らかになることは1つ,つまり典型的な数学者などというものはいない,ということです. お手本を探している数学の学生には,面白い可能性があることがわかるでしょう. エピローグでは,いくつか一般的な結論が引き出せるか考えてみました. また,この先に読み進むための参考文献も少し挙げておきました.
 原稿の一部を読んでコメントをしてくれたり,個別の問題の対処をしてくれた,多くの人々に感謝しています. とりわけ,ドン・アルバース,ジェリー・アレクサンダースン,ジューン・バロー=グリーン, ロン・キャリンガー,アン・ドウカー,ジョン・フォーベル,ジェレミー・グレイ,彌永昌吉,ジョン・ローリー, カレン・パーシャル,ローズマリー・スチュワート,ジョン・ティーラー,ロビン・ウィルソンに感謝します. 「数学の歴史研究に対するヴァーチャルな国際研究所」を通して,日立財団から得られた経済的支援にも感謝します. 肖像や長い引用の出典についてはできる限り巻末に掲載してあります.

2001年9月 オックスフォード大学数学研究所にて 


I.ジェイムズ



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