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『天書の証明』のホーム.
第2版の序文,
日本語版の序文,第6版の序文,
日本語第2版の序文
『天書の証明』 初版序文
ポール・エルデシュは好んで天書のことを話したものである.
G.H.ハーディーの,醜い数学に恒久的な場などない,という断定に従って,神が数学の定理の完全な証明を書き残しておく天書のことを.
エルデシュはこうも言っている.
神を信じる必要はないが,数学者として,天書は信じるべきだと.
何年か前,私たちは彼に,近似的なものでよいから最初の(そして非常に慎ましい)天書を書いてみてはと勧めてみた.
彼はそのアイデアに熱中してしまい,そして彼の性格からして,直ちに仕事に取り掛かり,何ページも何ページも自分の提案で埋めていった.
我々の本はエルデシュの85歳の誕生日のプレゼントとして1998年3月に世に出ることになっていた.
1996年夏のポールの不幸な死のために,
%% 彼はもはや本書を書くため助けてはくれないので,共著者ではなく,
共著者として彼の名を挙げなかった.
その代わり,本書を彼の想い出に捧げる.
天書に記される証明であるための定義というか特徴付けというものはない.
ここで私たちが提供するものはすべて,きらめくようなアイデアや鋭い洞察や素晴らしい観察についての私たちの興奮を読者にわかち合って欲しいと思い,選んだ例である.
我々の解説が不完全であっても,読者はこれを楽しんで欲しいものだ.
選択は大いに,ポール・エルデシュ自身の影響を受けている.
多くの話題が彼によって提案されたもので,多くの証明が直接彼まで辿れるものか,彼の優れた洞察によって正しく質問されたり正しい予想の形にされたことに起源を持つものである.
そうした訳で,かなりの程度本書は,何を天書に記される証明とすべきかということについて,ポール・エルデシュの考え方を反映している.
話題を選ぶ際に制限としたことは,この本の中のあらゆることを,大学数学の中でもある程度の技巧を習得済みの読者であれば読むことができる設定にしたことである.
少しの線形代数,基本的な解析や数論もいくらか,離散数学からの初等的な概念や考え方も健康に悪くない程度の量,それだけあればこの本にあるあらゆることを理解し楽しむことができるべきだとした.
私たちは,このプロジェクトについて私たちを助け支持してくれた多くの人々に大変感謝している.
とりわけ,草稿の議論をしたセミナーの学生たち,ベンノ・アルトマン,ステファン・ブラント,ステファン・フェルスナー,エリ・グッドマン,トルステン・ヘルドマン,ハンス・ミールケに感謝する.
本書を作成するための技術的な援助をしてくれた,マルグリット・バレット,クリスティアン・ブレスラー,エウゲニ・ゴーリロフ,マイケル・ジョスウィグ,エルケ・ポーズ,イョルグ・ランバウに感謝する.
原稿を最初から最後まで読んでくれたトム・トロッターと,素敵な図を描いてくれたカール・H・ホフマンと,偉大な故ポール・エルデシュ自身にはとりわけ,大きな恩義を感じている.
ベルリン,1998年3月
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『天書の証明』 第2版序文
本書の初版は素晴らしい歓迎を受けた.
さらに,普通でないほど多数の手紙を受け取った.
その中には,コメント,訂正,より短い方法,別証や扱うべき新しい話題に対する興味深い示唆が含まれていた.
(我々は完全な証明の記録に努めたのだが,我々の説明はそうではなかったということである.
第2版の出版は,本書のこの新しい形を提示する機会になった.
3つの章を付け加え,いくつかの章で実質的な改訂と新しい証明をし,些細な修正や改良をしたが,その多くは寄せられた示唆に基づいている.
また,「13の球面の問題」に関する,初版の1つの章を削除した.
その証明には詳細な議論が必要で,エレガントかつ簡潔な証明にはできないことがわかったからである.
手紙を書いて我々を助けてくれたすべての読者に,とりわけ,
ステファン・ブラント,ユルゲン・エルストロット,ロジャー・ヒース=ブラウン,リー・L・キーナー,ハンフリード・レンツ,ジョン・ショールズ,
ベルヌルフ・ヴァイスバッハ,ニコラ・プュシュ,クリスチァン・レベゥフ,そのほか
大勢の方に感謝する.
また,シュプリンガー・ハイデルベルクのルース・アレヴェルトとカール=フリードリッヒ・コッホ,シュプリンガー・ベルリンのクリストッフ・エイリッヒとトルシュテン・ヘルドマンの助力と支援に,そしていくつか見事な新しい図を描いてくれたカール・H・ホフマンに感謝する.
ベルリン,2000年9月
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日本語版序文
英語版の原著がこのように素晴らしい歓迎を受けたので,我々の本が他の重要な言語に,
特に強力な数学的伝統を持つ国々に翻訳されて欲しいものと思っていた.
日本人の印象深い数学的貢献や日本美術の時代を超えた感覚を思うに,数学における美とエレガンスは特に日本の読者には気に入ってもらえるものと思う.
英語第2版に基づいた日本語版が出版されることになって,我々はとてもうれしく思っている.
翻訳者の蟹江幸博氏に心から感謝する.
そのすべての仕事,その頑張り,またこの努力につぎ込んだ技術に感謝する.
我々は今から,日本の読者からの示唆やコメントの手紙を受け取ることを楽しみにしている.
ベルリン,2002年11月
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『天書の証明』 第6版序文
このプロジェクトのアイデアは1990年代の半ばに,オーベルヴォルファッハの数学研究所であの比類なき天才ポール・エルデシュとのんびり話をしていたときに生まれた.
本書の初版を発表したのは,もう20年ほど前のベルリンの国際数学者会議(ICM)でのことだった.
そのときは,天書についての我々の著書が,心温まる手紙や興味深いコメントや提案を受け,そして新版が出版され,13もの言語に翻訳されるなど,素晴らしくかつ長く受け入れられるようになるとは,想像することもできなかった.本書が我々の生活の一部になったと言っても過言ではない.
その多くが読者たちによって提案された数多くの改良と小さな変更に加えて,この第6版では,ファン・デル・ヴェルデンのパーマネント予想のガーヴィッツの証明を使ったまったく新しい章を書いた.これを使ってラテン方陣の数に対する漸近式を導いた.オイラーの定理 Σn≧1 1/n2=π2/6 の第4の新しい証明を付け加え,
フェルマ―の2平方の定理の
ヒース=ブラウンの対合を使った証明に対する新しい幾何的な説明を示した.
長年にわたって私たちを助け励ましてくれたすべての人に感謝する.
第2版では,この中にステファン・ブラント,クリスチアン・エルショルツ,ユルゲン・エルストロット,
ダニエル・グリーザー,ロジャー・ヒース=ブラウン,リー・L.キーナー,クリスチアン・レーベウフ,
ハンフリード・レンツ,ニコラス・プーチ,ジョン・ショウルズ,ベルヌルフ・ヴァイスバッハ,その他の多くの人々が数えられる.
第3版では.特にダーフィト・ベヴァン,アンダース・ビョルナー,ディートリヒ・ブレス,ジョン・コスグレイヴ,ヒューバート・カルフ,ギュンター・ピッカート,アリステア・シンクレア,ヘルベルト・ウィルフから恩恵を受けた.
第4版で特に世話になったのは,オリバー・ディーザー,アントン・ドヒテルマン,ミカエル・ハーベック,ステファン・フーガルディ,ヘンドリク・W.レンストラ,ギュンター・ローテ,モーリツ・W.シュミット,カルステン・シュミットの人々である.
第5版では,イアン・アゴル,フランス・ダカール,クリストファー・デニンガー,マイケル・ハーシュホーン,フランツ・レンマーマイヤー,レイムンド・ザイデル,トード・スジェーディン,ジョン・M.サリバンによるアイデアと提案に,またマリー=ソフィー・リッツ,ミリアム・シュレーター,ヤン・シュナイダーの助力にも大いに感謝する.
この第6版では,またもフランス・ダカールや,ダーフィト・ベンコ,ヤン・ペーテル・シェファーマイヤー,ユリア・セミキナから非常の有益なヒントが得られた.
さらに,シュプリンガー・ハイデルベルクのルース・アレヴェルト,シュプリンガー・ベルリンのクリストッフ・エイリッヒ,トルシュテン・ヘルドマン,エルケ・ポーゼの長年の継続的な支援に感謝する.
そして最後に,本書は,カール=フリードリヒ・コッホによって提案された元々のデザインと,カール・H.ホフマンによって新しく描かれた素晴らしい図の数々がなければ同じもののようには見えなかっただろう.
また,シュプリンガー・ハイデルベルクのルース・アレヴェルトとカール=フリードリッヒ・コッホ,シュプリンガー・ベルリンのクリストッフ・エイリッヒとトルシュテン・ヘルドマンの助力と支援に,そしていくつか見事な新しい図を描いてくれたカール・H.ホフマンに感謝する.
ベルリン,2018年3月
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日本語第2版序文
1998年のベルリンでの国際数学者会議の際に,英語の『天書の証明』の初版を発表したとき,それがどのように受け入れられるかについて非常に不安であった.---しかし結果的にはその反応のあまりの大きさに圧倒されたものだった.
初版を出版した時我々はまた,こまごました(過酷な)「仕事がやっと終わった!」と考えていた.
だが,その考えは間違っていた.
むしろさまざまな国の読者の反応や提案,特に各言語の専門家による翻訳が大きな励みとなって,このプロジェクトはどんどんと発展を続けていった.
日本語版もまたその初版が出版されて以降,たくさんの素敵な手紙や電子メールを頂き,多くの読者に受け入れられたことを嬉しく思っている.
さらにこの第6版を日本語でも読めるようにしたいという希望があることを聞き,大変幸せに思っている.
蟹江幸博氏は今度も,スタイルや詳細に注意を払い,新しい章と新しい説明に忍耐強く翻訳作業をやり遂げてくれた.
だから我々は彼の注意深い努力と多大な骨折りに感謝したい.そして多くの読者にとってこの日本語第2版が価値あるもので,有益で,かつまた楽しいものであって欲しいと思う.
ベルリン,2021年10月